
その方のお役に立てるように、自分の知識や技術は出し惜しみなくやります。
生きていく上で、メイクは必ず必要なものではないとは思うけれど、
場合によっては人生を変えていける力があるんです。
サロコレ編集部:経歴を教えてください。
泉 妃:専門学校在学中から、美容の現場で仕事をしていました。先輩たちに助けてもらいながら、学校に通いながら、仕事を受けて現場に出るという生活でした。今と比べると「仕事」と呼べる件数ではなかったかもしれませんが、いただいた仕事をとにかく必死にやっていましたね。若いころから経験を積めたことはとても良かったと思っています。フランスや韓国で研修を受けたことも大きな経験です。
現在は、北海道を中心に活動をしていますが、呼ばれたらどこへでも行きますよ。
サロコレ編集部:メイクにふれたきっかけはあったのですか?
泉 妃:一般的に、高校って「校則」があるじゃないですか。これをしちゃいけないとか、あれをしちゃいけないとか。自分が高校生の時、たくさんの「制限がかかる中」で、自分自身を表現しきれなかったなと思っていました。高校を卒業して「自由」という状況になった時、すごく解放された気がしたんです。好きなことしていいんだ!という感覚ですかね。
今思うことは、高校生の頃からナチュラルメイクを教えてあげることが必要じゃないかということです。メイクって、女性にとっては、学ぶ機会がないのに、社会に出たとたん「マナー」と言われますよね。社会人になってメイクを習うこともなかなかないし、自分が手助けできるなと思っています。
サロコレ編集部:現在のお仕事内容を教えてください。
泉 妃:広告を始めとした撮影関係や、ブライダル撮影、ミス・ミセスコンテストの出場者に向けたメイクレッスンが、今は多いですね。大会側から要望をいただいて、かなり色々な大会に携わらせていただいております。ミセスジャパン世界大会を始め、ミスユニバース北海道大会、ミスアースジャパン北海道大会、ミスワールドジャパン北海道大会などでお仕事させていただきました。当日のヘアメイクだけでなく、ヘアメイク講師や大会審査員を務めることもあります。
サロコレ編集部:コンテストのお仕事って、どんなことをするのですか?
泉 妃:「ステージ上で映えること」が大切なのですが、気を付けていることがあって「ステージ映え=濃いメイク」ではないんです。「自分らしさ」を表現される中で、濃いメイクが必要ない方もいらっしゃいます。
コンテストって、自分自身と向き合って、掘り下げていくことになります。その中で、メイクが「自分を表現するためにどのくらい必要なものか」を見極めてもらったりします。
ステージ上で華やかに振る舞っていることにフォーカスされがちですが、出場者の皆さんは、すごく勉強されていて、教育が入っていく中で、内面も磨かれていくんです。
サロコレ編集部:お客様のお悩みに対して、心がけていることはありますか?
泉 妃:多様な環境、色々な目的の方と接する機会が多いので、その場その場に適した指導を心がけています。
例えば、歯科衛生士さんやキャビンアテンダントさんのたまご、納棺師さん(亡くなられた方へのメイク)にも指導をしたことがあります。
職種はもちろんですが、働かれる環境や業務の内容によって、指導する内容もかなり変わってくるんです。マスクをする職業であれば、マスクをするにあたってのメイク方法や、マスクによる肌荒れの防ぎ方も伝えます。医療職であれば、患者さんに対しての印象を考えることもあります。
航空会社で指導する際は、機内での乾燥や暗さに対するアプローチも必要です。
個人であれば、その方がどんな職業で、どんな生活を送っていて、これからどんな自分でありたいかをヒアリングします。言葉だけでなく、その方のニーズに合ったものを提案しています。
分かりやすく言うと、食品工場で食べ物を扱っている人が、長めのネイルアートやつけまつげをしていたら、あれ?って思いませんか。その場その場に合ったものの必要性を勉強したり観察することも大切だと思います。
サロコレ編集部:お仕事に対する思いを聞かせてください。
泉 妃:美容って、衣食住のように、人が生きていく上で必ず必要なものではないとは思うのです。ですが、その方の人生を豊かにできるものだし、場合によっては人生を変えていける力があるんです。
「人の役に立ちたい」「喜んでもらいたい」「誰かのことを応援したい」というのが、私の基本スタンスです。
サロコレ編集部:そう考えるきっかけはどのようなものだったのですか?
泉 妃:仕事をする中で、「うれしい」と思ったことだったんです。例えば、ブライダルのヘアメイクに入った時に、お嫁さんが喜んでくれた時ですね。どんな場面でも、その方の役に立てるように、自分の知識や技術は出し惜しみなくやろうと考えています。
外見の見た目だけではなく「今のままじゃいけない」とか「自分を変えたい」と感じている方のきっかけになれるようなメイクレッスンができたらいいなと思います。
専門家プロフィール
泉 妃 Kisaki IZUMI
ヘアメイクアップアーティスト
フランス・パリでの「JEAN-PIERE FLEURIMON」や、韓国「VS TOTAL BEAUTY ACADEMY」などの研修を修了。
ヘアメイクの大会に参加し、優勝・入賞など数々の賞を受賞したのち、2001年頃からフリーランスのヘアメイクアップアーティストとして活動。現在、TVCM、広告、モデルやタレント、俳優のヘアメイク、ブライダルのヘアメイクやミスコンテスト、ミセスコンテストのヘアメイクやメイクセミナーなどの講師活動や、コスメコンシェルジュの知識をいかし、美容ライターなど幅広く活動中。